ヤンゴンでは、トレーダースを宿にした。
立地がよく、ボージョーアウンサンマーケットやスーレーパゴダは徒歩圏内である。
また、高層のため見晴らしがよい。
経年による古くささは否めないが、サービスはしっかりしている。
午前中はマーケットを見て回り、午後、夫妻と合流し国立博物館へ行く。
館内は停電していて薄暗い。
知人は義憤に耐えかね、
「なぜ日本語の解説がないのか、こんな場所が停電したら意味ないじゃないか。」
などと苦情を言い立てる。
ところが、「こうした場所では静かにするように」と注意されてしまったそうだ。
この博物館の一押しは、「獅子の玉座」と呼ばれる巨大な王座である。
近世ビルマの隆盛がしのばれる。
その後、アウンサン将軍の像を見にカンドーヂー湖へ行く。
周囲は公園になっていて、デートスポットとして有名なのだそうだ。
旦那さん曰く、
「日本と違ってミャンマーにはラブホテルがないから、若者はこういう場所に来るんですよ」
「へえー、ミャンマーにはないんですか。」
「最近は少しあるみたいだけど、昔はなかったんですよ。私もあと20年若ければ来るんですけどね。」
すると後ろを歩いていた知人から、
「2人が何を話しているか分かっているからね。」
とクギをさされる。
一度ホテルへ戻り、カクテルタイム中のラウンジで、しばし談笑する。
「日本に16年もいたでしょう。ミャンマーに戻ってきたら料理が油っこくて、お米も堅いしおいしくなくて、お腹をずっと壊してたんです。」
隣で旦那さんが、相づちを打つ。
「そう、カイさん(仮名)は、ミャンマー人じゃないみたいだったね。」
「日本に居たくて、ミャンマーには帰りたくなくて・・・。」
「帰る飛行機の中でずっと泣いてたんですよ。」
「でもね、友達が日本料理の店に連れて行ってくれて、そしたら下痢が治ったの。」
油もさることながら、ストレスが大きかったのだろう。
「それなら今日は日本料理を食べに行きましょう。お世話になったお礼もしたいし。」
トレーダースから遠くないパークロイヤルホテルに日本食の店があり、3人で出かけることになった。
刺身を食べ日本酒を飲むと、知人は満足そうだ。
「私はこういう油が少ない料理の方が好きなんです。あとタイ料理も。」
「そう、2人ともタイ料理が好きで、よく行くんですよ。」
「週に1度は、日本食とタイ料理が食べたい。」
知人が旦那さんを見ながら言うと、旦那さんは苦い顔をしている。
ヤンゴンでは、どちらの料理も高価なのだそうだ。
「私もタイへ行ってみたいなあ。」
「そうだ、来年はタイで集まりませんか?カイさん(仮名)は行ったことないから連れて行ってあげたいし。」
と旦那さんが提案する。
「タイならビザが必要なくて行きやすいから、いいかもしれませんね。」
ということで、来年はタイに集合である。
実現すれば、きっと楽しいに違いない。
このレストランの代金は当然自分が払うつもりでいたが、トイレへ立った間に支払いを済まされてしまった。
かえって迷惑をかけてしまったかもしれない。
「この後どうします?下に踊れる所があるけど行ってみます?」
疲れていたが、せっかくのお誘いなので、旦那さんに付いて行った。
店は「The Music Club」というパブのようなディスコのような店で、11時になるとショーが始まる。
まず、ファッションショーのような調子で女性が出てくる。
次に、ダンサーが出てきて踊る。
3番目は、下ネタ歌謡曲を歌うおばさんの独唱。
このセットをもう一度繰り返す。
「ミャンマーにもこういう場所があるんですね。」
「タイにはもっとあるでしょう?」
「でもタイの方が大っぴらな気がします。」
眠くて仕方ないので、これにてお開き。
「あのー、気をつけて帰ってくださいね。」
車を運転する旦那さんに声をかける。
「大丈夫、大丈夫、いつものことだから。」
「そうそう、ミャンマーでは皆お酒飲んで運転してるから。」
そうではなく、事故にならないように気をつけてほしいのだが・・・。
とても楽しい一日だった。